【噴水台】韓国にとってW杯とは

  「シュートを打ちなさい。さもなければ得点はできない」。何を言っているのかと思うかもしれないが、伝説的なサッカー選手ヨハネ・クライフの言葉だった。

  彼はまたこのように言った。「サッカーはシンプルだ。しかし最も難しいのはシンプルにプレーすることだ」。

  今回のワールドカップ(W杯)で急増したというペナルティーキック(PK)を見て「シンプル理論」を思い出した。走るチームメートに30-40メートルのパスを難なく出す選手たちが、停止状態のボールを11メートルの距離の17.8平方メートルの空間に蹴り込むのに苦労するのだから。この時、ボールがゴールラインを通過するのに0.5秒かかるという。GKが反応する時間は0.6秒。理論上では蹴れば入るということだ。しかし平均成功率は75%程度だ。PKでも歴代級という評価を受けるクリスティアーノ・ロナウド(84%)も今大会では2回蹴って1回失敗している。

  単純に見えても単純ではないのだ。実際、GKとキッカーが作り出す動力学はよくゲーム理論の素材になったりもする。例えばこのような形でだ。右利きなら左に蹴るのが自然な方向だ。左利きはその反対となる。このような類のキックが60%を占めるという。GKはこれを考慮してジャンプする。このようにみると左でも右でも真ん中でもどこに蹴ろうと成功率は特に差がなくなる。ただ、ボールの高低によって違うが、中間以上の場合はGKが防ぐ確率が3%にすぎない。しかしボールがゴールの枠の外にいく可能性(18%)も高まる。2003年にデービッド・ベッカムが空に蹴った前例もある。それでも上のボールの成功率(79%)が下のボール(72%)より高いという。

  PK戦はさらに頭脳の戦いとなる。少なくとも5回のキックが続くからだ。それでも結果は運・不運だ。コイン投げに例えられたりもする。しかしコインは誰が先に投げようと確率が50%だが、PK戦では先に蹴るチームの勝率が60%という。

  ここでイングランドファンの愚痴を思い出す。「70年代に私はイングリッシュマンになった。通常のイングランドの人々がそうであるように、私もイングランドを嫌ったという点でだ」(『Fever Pitch』)。サッカー宗主国にふさわしくイングランドが優勝するだろうという期待の中でW杯を迎えるが、成績に絶望したりもする4年周期の心理サイクルのことだ。1966年以降繰り返されてきた「儀礼」だ。最近の韓国のW杯挑戦史を見ると、私たちも同じ脈絡の韓国人になっていくのではないかと思う。

  私たちの事情はともかくW杯は頂点に向かう。PKはもちろん、PK戦もするトーナメント段階だ。改めてPKの話を持ち出したのはそのためだった。今はサッカー自体を楽しもう。

  コ・ジョンエ/中央SUNDAY政治エディター

中央日報 http://japanese.joins.com/article/722/242722.html

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