【コラム】文在寅大統領に足りないのは知ではなく徳だ

 「最低賃金の引き上げはプラス効果が90%」「自動車・造船産業は改善している。潮が満ちているときに船を漕ぐべきだ」

  文在寅(ムン・ジェイン)大統領が実態とかけ離れたおかしな発言をするたびに、知的能力が足りないのではないかという声が上がる。筆者があちこちで実際に聞く質問の一つだ。文大統領は名門高校を卒業し、司法試験に合格した人物だ。直接会った際にも知的能力は十分だと感じた。

  文大統領の問題は知的能力ではなく、閉鎖性にある。1970年代に社会評論家でジャーナリストの故・李泳禧(リ・ヨンヒ)氏に傾倒して以降、数十年間にわたり関心の幅が狭いのだ。韓国の保守よりも北朝鮮を好み、米国よりも中国を好む。盧武鉉(ノ・ムヒョン)元大統領が最も尊敬する人物が毛沢東だったのと一緒だ。当然経済よりも南北関係に対する関心の方が大きい。人は誰でも自分が好きで関心がある分野に詳しくなる。そうではない分野はないがしろにされ、無知になってしまう。冒頭の発言は知的能力が足りないからではなく、自分の関心事ではないからこそ飛び出したものだ。

  自分が好まない分野や人物に対しては、関心を持ち続けることが難しいものだ。関心事や好みというものはコインの裏表だ。関心を抱くためにはそれを好むか、少なくとも敵意があってはならない。文大統領は自身と政治的な立場が異なる人々に強い敵対感情を抱いている。韓国の全ての政治家はある程度の敵意を持っているが、それでも文大統領のそれにはかなわない。文大統領は民主党の大統領候補争いで、安熙正(アン・ヒジョン)元忠清南道知事の支持率が上昇すると、「(安熙正には)怒りがない」と批判した。なぜ保守や財閥に怒りを感じないのかという意味だ。文大統領は今でも「親日派」が保守、軍部、財閥に変わったと考えている。敵意がどれほどのものかうかがい知ることができる。その敵意が現在、前政権関係者を執拗(しつよう)に踏みつけるという形で表出している。

朝鮮日報 http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2018/12/28/2018122880045.html

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