【コラム】優しい政権を越えて賢い政権に

  優しい子と賢い子――。親は子供が何と言われることを願うだろうか。アンケート調査をしてみないと分からないが、子供の頃の経験では断然後者が圧倒的だった。背が低くて大抵教室の最前列の席に座っていたから黒板のすぐ近くの担任の先生の机で顔を寄せ合って交わされる保護者との学事面談の内容がしばしば耳に入って来た。勉強が普通の平凡な級友の母親には「とても優しくて真面目です」以外には思いつかなかったのかもしれない。勉強ができる何人かの子供の母親に会えば違った。「賢くて試験の点数も高いです」という称賛に母親がぱっと笑顔になった。

  「優しい子」は大抵の小学校の教訓の常連文句である一番の品性なのに、お母さん方にはなぜ響かないのだろうか。「賢い」と言われなければどうしても満足できないのか。当時幼い子供には不思議だったが、学業競争が始まる中学校に進学すると疑問は解消された。学閥社会の非情な私教育競争を描いたドラマ『SKYキャッスル』が大ヒットしたのを見ても優しさより賢さを評価する世相は以前より顕著でこそあれ劣ることはないだろう。

  幼い頃の記憶がふと思い出されたのは「優しい政府」フレームに陥った政権に対して「賢い政府」への国民の望みが高まっていく兆しのためだ。優しい以上を具現化する賢い政府を国民が熱望し始めたということが世論調査などに表れている。とりあえずやらかしてから慌てて取り繕う政策がなぜこんなに多いのか。それでも「私たちの道は正しい」「DNA自体が違う」というような硬い独善が心配だ。善意は無能の免罪符にはなれない。政権発足以来「悪魔はディテールにある」「地獄に行く道は善意で舗装されている」という警句が大流行した。善意を支えられない能力不足のせいだった。ともすると国家の蔵を開いて公務員や臨時職を量産することばかり考え、共有経済・革新成長をしっかり行い雇用を増やすことができなかった。韓国電力を赤字企業にした脱原発とエネルギー転換のスピード・オーバーを調節しなければならない。朝鮮時代の士禍(官僚弾圧)のような積弊清算で国を台無しにするのではなく精密な外科手術のような改革を一気にしなければならない。最低賃金引き上げと所得主導成長は「ボート競技の舵取りやオールで漕ぐ協働のように福祉・マクロ・労使・自営業・公正取り引きなどの様々な政策が呼吸を合わせて行わなければならなかった」〔柳鍾一(ユ・ジョンイル)韓国開発研究院(KDI)国際政策大学院長〕。

  「悪い市場が優しい政府よりましだ」という自由主義経済学者ミルトン・フリードマン氏の忠告が今更のように感じられる。不良政策が市場状況を悪化させるのが常だという話だ。子供は優しいことが美徳にもなり得るが、善意で浮ついた政府はベネズエラのようにポピュリズムの罠に陥ったりする。あれこれ手を付ける万機親裁の政府より国富と雇用の泉である企業が思う存分走りまわれるように側で手助けする「ナッジ(Nudge)型」のスマート政府が切実だ。方向が的外れだったり未熟だったりする政策はそれ自体で市場にとってのとてつもないリスクだ。フリードマン氏のこのような警告が書かれた名著『派手な約束と憂うつな成果(邦題:政府からの自由)』が大きな政府を当然視するこの政権の「悪魔の代弁者(Devil's advocate)」の役割を務めてくれたら良いと思う。

  執権3年目の最近はそれでも「優しい政府」イメージまで手に余るようだ。政策実効性論議が起こるたびに「もう少し様子を見よう」「誤った過去に戻ることはできないではないか」という説得調の弁明をしていたが、ことしからは国民を相手に言い張って癇癪を起こすようなことが頻繁になった。

  MB〔李明博(イ・ミョンバク)元大統領〕の土建の歴史を思い出させる20兆ウォン(約1兆9800億円)超の大型インフラ事業の予備妥当性検討を免除し一方的に押し進めながら「地域均衡発展のため」という一言で受け流す。金慶洙(キム・ギョンス)慶尚南道(キョンサンナムド)知事の法廷拘束について与党が総力的に3権分立を損なう「司法壟断」を行う。環境部のブラックリストはチェックリストだけだと、20代の青年層の根深い不満は保守政権時期の誤った反共教育のせいだと言い張る。不通の兆しに「朴槿恵(パク・クネ)政権2期のようだ」という批評が頭をもたげる。

  振り返ってみると、小学校の時に担任の先生が優しいといった子供がみな優しいわけではなかった。友人を馬鹿にして自分だけが正しいと固執していた、どうしようもない子もかなりいた。

  ホン・スンイル/中央日報デザイン代表

中央日報 https://japanese.joins.com/article/675/250675.html

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