【コラム】こぼした後にまた拾い集めるだって?

  日本政府が福島原発事故現場に保管されている汚染水を海に放流したり空に蒸発させたりするという意図を表明しながら国際的な公憤を買っている。一日に170立方メートル増えている汚染水が115万立方メートルにもなり、悩みの種になっているのは確かだ。だが、2011年原発事故の時に漏れ出た放射性物質が東海(トンへ、日本名・日本海)まで流入したことが確認されたことから、多量の汚染水を放流する場合、問題がないと誰が言い切ることができるだろうか。事実、釜山機張(プサン・キジャン)には2000億ウォン(約180億円)近くの費用を投じて2014年に設置された海水淡水化施設があるが、稼働中断を余儀なくされている。北へ11キロのところにある古里(コリ)原発から放射性物質が出る可能性もあると言って住民が反対しているためだ。このような状況で福島汚染水の放流は容認できない。

  汚染水の放流は海が無限に広く深いという前提が根底にある。だが、海は無限ではない。気候変動に関する政府間協議体(IPCC)が25日に採択した「海洋・雪氷圏特別報告書」も、人類が排出した二酸化炭素のせいで海洋が酸性化されるなど海は有限であることを指摘した。

  地球の大気も有限だ。IPCCは昨年10月の報告書では大気中の温室効果ガスを縮小するためにバイオエネルギーとバイオ燃料CO2回収・貯留(BECCS)技術を強調した。光合成で温室効果ガスを吸収する植物を栽培し、作物はバイオエネルギーとして使い、その時に排出される温室効果ガスは地中に埋める技術だ。だが難しく複雑で、また別の環境汚染を引き起こす。どうせなら初めから温室効果ガスの排出量を大幅に減らすほうがいいという話もある。

  粒子状物質も同じだ。今年3月、韓国政府は人工降雨や大型空気浄化塔を解決策として提示したが、批判が相次いだ。ソウルだけで空気浄化塔2000万基が必要で、韓半島(朝鮮半島)全体に雨を降らせるためには航空機数百機を動員しなくてはならない。

  こぼれた水のように汚染物質を排出しておきながら今になって多くの努力と費用をかけて拾い集めようとする愚かさは至る所で目にすることができる。今月20日、沿岸浄化行事を控えて海のゴミを事前にばらまいた全羅南道珍島郡(チョルラナムド・チンドグン)の公務員が代表的だ。最初のボタンを間違いなくかけなければ問題はますます複雑になるばかりだ。

  カン・チャンス/環境専門記者・論説委員

中央日報 https://japanese.joins.com/article/084/258084.html

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