【記者手帳】韓国政府が送ったはずの防護服4万7000着、大邱では「見たことない」

 大邱の医療陣を撮影した写真は、例外なく全身を覆う白の防護服姿だ。感染を完全に遮断できる「レベルD」の防護服だ。武漢コロナウイルスとたたかう防疫戦士たちに支給されるべき基本中の基本装備だ。使い捨ての装備だが、230人の感染者が入院している大邱啓明大学の大邱東山病院では、この防護服の在庫が底をつきそうになっている。病院関係者は「1日に350着の防護服が必要だが、1週間分(2400着)も残っていない」と伝えた。

  28日の時点で大邱の感染者は全国の70%に相当する1579人だが、それでもこの有り様だ。防疫当局は今月26日、検体を採取する際には全身防護服ではなくガウンの着用を勧めるとの指針を出した。防護服が足りないので、このような苦肉の策まで出てきたのだ。最前線に立つ医療陣が感染の危険にさらされている。

  政府による公式の説明は完全に違っている。中央事故収拾本部の本部長を務める韓国保健福祉部(省に相当)の金剛立(キム・ガンリプ)次官は28日のブリーフィングで「現地の要請によって大邱の医療陣に全身防護服を約4万7000着、マスク7万7000枚を送った」と明らかにした。現場で防護服が不足しているはずがないとでも言いたいような口ぶりだ。防疫当局によると、今月18日に大邱で新天地教会信者の感染者が確認されてから、政府は全国に全身防護服を計19万着支援した。さらに今月中に20万着が追加で送られる予定だ。

  官僚たちの机上の計算と、緊迫する現場の状況はいつも異なるものだ。それでもこれはあまりにもひどい。大邱のある大学病院で働く専攻医は「政府ではなんと言っているのか知らないが、防護服は途方もなく足りない」と語る。大邱医師会のイ・サンホ総務理事は「今日、選別診療所11カ所に問い合わせたところ、一様に『防護服が足りない』と言ってきた」「歌手のIU(アイユー)さんが支援してくれた防護服は保健所ごとに100着ずつ送られてきたが、国が送ったというものは見たことがない」と説明した。

  このような状況について保健福祉部の関係者は「防護服を地方自治体の保健所を通じて医療機関に送る過程で、多少の遅れが生じたようだ」との見方を示した。「近く状況は改善する」「大した問題ではない」というのだ。大邱医療院のユ・ワンシク院長は25日、大邱を訪れた文在寅(ムン・ジェイン)大統領に「どれだけ必要かを問わず、条件抜きに頂けれるのであれば、大事に使います」と述べた。どれだけ緊迫していればこのような言葉が出てくるだろうか。「これが国か」という言葉が出るほかない。

朝鮮日報 http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2020/02/29/2020022980011.html

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