【萬物相】株式市場の「アリ東学農民」

 1894年、東学農民軍は牛金峙の戦闘で日本軍と最大の接戦を繰り広げた。東学軍は公州の南端にある海抜100メートルの峠、牛金峙さえ突破すれば水原を経て漢陽(現在のソウル)まで北上する勢いだった。しかし東学軍は大敗した。2万-4万人の兵のうち生き残ったのはわずか3000人だった。

  数の上では東学軍が大幅に上回っていた。官軍は東学軍のほぼ10分の1の規模で、官軍と手を結んだ日本軍は訓練兵を含めても500人ほどだった。しかし、双方は兵器から異なっていた。官軍と日本軍は英国製スナイドル銃や日本軍が独自に開発した村田銃など、最新式の銃器を携帯していた。「伏せ撃ち」の姿勢で、1度の装填で15発撃ってくる相手に対し、東学軍は弓・刀・槍(やり)で応戦した。

  韓国の株式市場で、官軍・日本軍が機関投資家や外国人だとすれば、個人投資家は農民軍のようだ。個人投資家は実に620万人で、全体の99%を占める。数では絶対優位だ。機関投資家は2万7000人、外国人株主は1万9000人程度だ。しかし個人投資家はたびたび苦杯をなめる。

  投資金額の規模はもちろんのこと、情報力やリスク管理能力の面で比較にならない。10億ウォン(約8700億円)以上を操る個人投資家「スーパーケミ(ケミは韓国語でアリの意味。個人投資家を俗にケミ=アリと呼ぶ)」もまれに存在するが、普通の「アリ」たちは多くても数千万-数億ウォン(約数百万-数千億円)だ。それもちょこちょこと売り買いし、株価が暴落すれば怖くなって損切りする。借金した上に大金を失い、「極端な選択」をする「アリ」もいる。一度に数百億-数千億ウォン(数十億-数百億円)を投入し、株式市場を丸ごと動かす外国人・機関投資家の前で、アリはいつも餌食になってしまう。過去6年間で個人投資家たちが多数買った10の種目を比較したところ、外国人は6-29%の収益を挙げる一方で、個人投資家は元本割れを起こしていた。苦肉の策として外国人に追従して買いに走る個人も多い。しかし「爆弾回し」の最後はアリの手で爆発するのがお決まりの結末だ。

  今回のコロナショックによって株価暴落が続いている。「就職もできないのだから、この機会にちょっとカネでももうけよう」と低価格での購入を狙って株の世界に飛び込む20-30代も多いという。今月に入って19日までに個人投資家は8兆6000億ウォン(約7400億円)分の株式を買い、外国人は9兆5000億ウォン(約8200億円)分を売った。外国人が売った株式を個人が買い受けた。そのおかげで先週末は株価の暴落が一段落した。アリが力を合わせて株式市場を支えている格好だ。アジア通貨危機のときにもアリたちが殺到したが、今回も同じような状況だ。外国人は上空から台風の動きを観察しているが、ポンポン船に乗った個人投資家は海上で波と戦っている。株に投資すれば個人に分け前があり、成功した人も少なくない。しかし「牛金峙の教訓」を一度は考えてみる必要がある。 ユン・ヨンシン論説委員

朝鮮日報 http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2020/03/27/2020032780146.html

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