【コラム】韓国映画の支柱が倒れる

 韓国映画界というテントを支えてきた、強固な柱が折れてしまいそうだ。1年の間でシアター街が最も繁盛する時期に挙げられるのが「夏」だ。そういうわけで、7-8月に上映される韓国の大作映画のことを、よく「テントポール(tent pole)」と呼ぶ。安定的な興行で他作品の損失まで埋める孝行者の役目をたっぷりと果たしてきたテントの柱、という意味だ。コロナ時代以前の韓国映画産業の規模は2兆5000億ウォン(現在のレートで約2350億円。以下同じ)に達していた。

  コロナ発生1年目の昨年の成績と単純比較しても、今年の状況は暗鬱(あんうつ)としている。確定患者数が急速に増えていた昨年7-8月の時点でも、『ただ悪から救いたまえ』(435万人)、『新感染半島 ファイナル・ステージ』(381万人)といった大作は比較的善戦した。逆に今夏の成績は、これにも大きく及ばない。まだ公開中なので最終成績を予断するのは難しいが、『モガディシオ』(8月23日現在278万人)、『シンクホール』(同165万人)など、ほぼ半分に近い水準だ。「1000万映画」は消えて久しく、このごろは夏の封切り作の観客を全部合わせても「観客1000万」にはならない。

  単純比較の裏事情はずっと深刻だ。劇場の座席販売にも赤信号がともったからだ。コロナ以前までは、ヒット作の座席販売率は30%に達していた。劇場に行けば10席中3席は客がいた、という意味だ。ところが昨年からは、人気作の座席販売率も10%台に落ちた。映画を工場になぞらえると、工場の稼働率はそのままなのに、製品の販売量は急減したことになる。映画館で上映1回当たりの観客数が平均4人ほどにすぎない作品はザラにある。映画館がビデオボックスに転落した…という嘆きは、故なく出ているわけではない。

  今年の映画産業が昨年より悪化した要因が、もう一つある。今年、シネマコンプレックス(複合映画館、マルチプレックス)はシアター街の生き残りのために、韓国映画の『モガディシオ』(製作費250億ウォン=約23億円)と『シンクホール』(同140億ウォン=約13億円)について製作費の半分は保証してやることとした。仮にヒットしなかったとしても、投じた資金の半分は無条件で戻してもらえるという破格の支援策だ。韓国映画の『人為的景気浮揚策』と言えようか。もし、赤字を甘受して支援したにもかかわらず売り上げが急転直下したら、その産業の未来はどうなるだろうか。今の韓国映画界は、まさにそういう状況だ。 ■「コロナ禍でも善戦した韓国、経済大国9位に」…OECD見通し

朝鮮日報 http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2021/08/27/2021082780058.html

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