【萬物相】DNA警護

 2019年に米朝首脳会談のために列車でベトナムに向かっていた北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長が中国で一時下車し、たばこを吸った。妹の金与正(キム・ヨジョン)が灰皿を持って近づき、吸い殻を回収する様子が話題になった。たばこに付着した唾液を通じ、金正恩のDNA情報が西側に渡ることを懸念したのだという。シンガポールでトランプ前米大統領と会談する間、金正恩はずっと専用便器を使い、排泄物を徹底して持ち帰った。金正恩が文在寅(ムン・ジェイン)大統領との合意文に署名する際に使ったペンを金与正がいちいち回収したのも同じ理由だったとされる。

  国家指導者の健康情報やDNA情報は各国情報機関が欲しがる。2011年5月にアイルランドを訪れたオバマ元米大統領がパブに立ち寄り、ビールを飲み干して立ち去ると、警備員がジョッキを回収した。ソ連のブレジネフ元書記長がデンマークのコペンハーゲンを訪れた際、フランスの情報機関は彼の宿泊先ホテルですぐ下の部屋を借り、排水管を解体して小便を回収した。国家元首が触れた紙切れ一つも収集対象だ。韓国も大統領の健康情報を大統領令の保安業務規定によって、2級秘密として保護している。

  人間のDNAには約30億個の遺伝情報が含まれている。皮膚の色はもちろん、数百年前の祖先の家系まで追跡できる。糞尿や唾液が少量あれば、どんな疾病があり、どんな薬を服用しているのかも把握できる。がん全体の5%前後では発病確率まで予測可能だ。希少疾患がある事実が判明することもある。ミッテラン元副大統領は在任中に前立腺ががあることを手術直前まで隠していたが、生体情報が流出していれば不可能だったかもしれない。

  ウクライナ問題の仲裁を行うため、最近ロシアを訪問したフランスのマクロン大統領がプーチン大統領と4メートル離れて会談した写真が話題になった。2人は握手もせず、長いテーブルを間に挟んで向かい合った。マクロン大統領がロシアによるPCR検査の要求を拒否したからだ。綿棒を使ったPCR検査で採取された細胞からDNA情報がロシアに流れることを懸念したからだ。

  特定人物のDNAにだけ致命的に作用するバイオ攻撃兵器を開発することは可能だろうか。専門家は現時点では不可能だという。人類はDNAの99.9%を共有しているが、特定の遺伝子だけを攻撃する技術はまだ存在しないということだ。しかし、オミクロン株のように少数だけに致命的なウイルスが存在しているのだから、想像の中の話というわけでもないとの主張もある。 キム・テフン論説委員

朝鮮日報 http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2022/02/25/2022022580115.html

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