【4月30日付社説】文大統領が公布する最後の法律が退任後の安全を保障するための法律だとは

 韓国与党・共に民主党は検察の捜査権を完全に剥奪する「検察捜査権完全剥奪法案」を文在寅(ムン・ジェイン)大統領の任期が終わる前に公布するため、国務会議(閣議に相当)の時間を調整するよう青瓦台(韓国大統領府)に要請したという。法律が効力を持つには公布されねばならない。当初、国務会議は3日午前に予定されていたが、この日のうちに国会本会議で法案を採決し、ただちに公布できるよう午後に遅らせてほしいというのだ。あるいはこれでは見た目が良くないので、「5月4-9日に臨時の国務会議を再び開催する」という話も出ている。青瓦台は共に民主党の要求通り国務会議を遅らせる方向で検討しているという。

  一つの法案のために国務会議を遅らせるのはあまりにも異例だ。2019年に日本の輸出規制への対応を議論したときのように、経済や安全保障で緊急のケースであれば例外的に午後に開催されることもあった。「検察捜査権完全剥奪法案」はこれを1日でも早く成立させなければ韓国の国益に大きな被害が発生する緊急の問題だろうか。共に民主党が法案の採決を急ぐただ一つの理由は文在寅(ムン・ジェイン)政権が終了する前にこの法案を成立させるためだ。5月10日から尹錫悦(ユン・ソクヨル)次期大統領の任期が始まれば、国会で法案を成立させても新しい大統領が拒否権を行使できるからだ。

  共に民主党が検察の捜査権を剥奪する法案の制定に向け動き出した際、「文大統領がこの法律の問題点を指摘し自制させるのでは」との見方も少なくなかった。国の司法体系を根本から変えるこの法律については法曹界全体が反対の立場を表明している。「検察捜査権の見直し」という原則には賛成してきた与党系の市民団体でさえも「ここまで周囲の聞く耳を持たずに法案を採決すべきではない」として懸念を表明した。つまり共に民主党が検察の捜査権を剥奪する法律を強行採決した場合は文大統領による拒否権の行使を期待していたのだ。

  ところが文大統領は拒否権の行使どころか、共に民主党が「偽装離党」や「会期の分割」などありとあらゆる手段を全て動員した検察捜査権完全剥奪法案のスピード戦に国務会議を先送りすることで調子を合わせている。検察捜査権完全剥奪法が公布されれば、青瓦台による蔚山市長選挙への違法介入や月城1号機原発の経済性ねつ造、産業通商資源部(省に相当)のブラックリスト、大統領の家族が関係する李相稷(イ・サンジク)議員による不正など、現政権の不正行為に対する検察の捜査が9月以降は全て中断となる。

  これらはいずれも文大統領が直接・間接に関係する犯罪ばかりだ。自分の不正に対する捜査を阻止する法案を自ら議決し、これを公布する形になるのだ。文大統領が5年の任期を終え、最後に公布する法律が自らの退任後の安全を保障する法律になるという事実は実に多くのことを示唆している。

朝鮮日報 http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2022/04/30/2022043080008.html

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