【コラム】「青瓦台が韓国軍をふ抜けにした」

 韓国の歴代政権は、トラウマとなる事件を少なくとも一つは抱えていた。ある事件は、政権が交代した後も前政権の関係者を苦しめた。事件そのものより、それを隠す過程で見られた行いの方が問題になることもあった。文在寅(ムン・ジェイン)政権では、「北朝鮮漁船の入港亡命」事件に、そうした兆しが現れている。

  北朝鮮漁船亡命事件で、韓国軍は致命傷を負った。警戒の失敗だけでなく、事件を縮小・隠蔽(いんぺい)しようとしたという汚名まで着せられた。北朝鮮の漁船は6月15日未明、自力で悠々と三陟港に入り、埠頭(ふとう)の端の防波堤に接岸した。韓国軍は最初からその事実を知っていた。にもかかわらず、17日の最初のブリーフィングでは「北朝鮮の木造船を三陟港付近で確保」「北朝鮮の木造船が漂着した」と言い、真相を覆い隠した。

  このように何ら言い訳する余地のない軍内部は、尋常でない様相だという。韓国軍関係者は「合同参謀本部(合参)では当初、あるがままの状況を出そう(公開しよう)という意見もあったらしい。大統領府(青瓦台)の『ガイドライン』通りにしたが、こんなことになった」「青瓦台が軍をふ抜けにした」と語った。

  今回の事件は、ちょうど北欧歴訪中だった文在寅大統領がスウェーデンに滞在していたときに起きた。6月16日午後0時50分に文大統領が城南ソウル空港に到着するまで、最終コントロールタワーは鄭義溶(チョン・ウィヨン)国家安保室長だった。そうした中で国防部(省に相当)は、15日に事件が発生してから2日間、口を閉ざしていた。その間、国家安保室は何をしていたのだろうか。

  国防部は17日からブリーフィングを始め、最初のブリーフィングが問題の「三陟港付近で木造船確保」というものだった。当然、大統領府国家安保室との「調整」を経たものだろう。国家安保室は行政官を国防部のブリーフィング会場に送り込み、現場の反応をチェックするということも行った。だが同日午後から、北朝鮮の漁船を目撃した住民の証言に加えて写真までもが続々と出てきた。2日後の19日、国防部のブリーフィングでは「なぜ三陟港付近の海上から木造船を連れてきたかのように事案を小さく見せかけたのか」という追及が殺到した。

朝鮮日報 http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2019/06/28/2019062880175.html

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