【記者手帳】2019年憲法裁判所の「慰安婦結論回避」

 「本件の審判請求を却下する」

  韓国憲法裁判所の劉南碩(ユ・ナムソク)所長が27日、韓日慰安婦合意に対する憲法訴願の結論を読み上げると、記者たちはざわめいた。強制徴用判決に続き、韓日関係に大きな影響を与えるものと見られた結論が「審判の対象でない」というものだったからだ。

  憲法裁判所は2011年、「国が慰安婦問題の解決に乗り出さないのは違憲だ」と判決した。憲法裁判所が政府に慰安婦問題の解決を命じたことになる。これに従って韓国政府は日本と協議し、2015年の韓日慰安婦合意を作り出した。これに対して弁護士団体「民主社会のための弁護士会(民弁)」が「被害者を排除した合意は違憲だ」として憲法訴願を提出していた。憲法訴願とは、憲法裁判所が引き起こした歴史的判断の産物だった。合憲であれ違憲であれ、判断が示されると多くの人々が予想していた。それが最高司法機関の責任ある態度だと考えたからだ。ところが、憲法裁判所は「法的拘束力のある条約ではなく、非拘束的、政治的合意だ」として判断を避けた。

  その前日、裁判所は同じ問題について司法府としての判断を出していた。ソウル高裁は慰安婦被害者らが国を相手取って起こした損害賠償請求訴訟で、慰安婦合意について、「『被害者中心主義』に反して精神的苦痛を与えた」と判断した。「国家間の外交行為なので、違法性を認定できない」という一審判決を覆したものだ。どちらか一方が異議を申し立てれば、正式な判決を下さなければならない。最終的な結論は大法院が出す可能性が高い。どの判断が正しいのかという議論とは別に、少なくとも裁判所は憲法裁判所のように本質的な部分を避けて通らずに真正面から向き合った。

  2011年の「国は外交関係のために慰安婦問題を回避してはならない」と述べて韓日関係を揺るがしたのは憲法裁判所だった。ところが、それに従って行われた慰安婦合意が正当なのか不当なのかという判断を避けた。「内容が不明確で、それ自体には被害者たちの権利に影響を与えない」という。憲法裁判所は2011年に違憲判断をした際、慰安婦問題の歴史的過程や解決の方向性を見て長文の決定文を出した。それでも「名称が条約ではない」「文書化していない」という極めて形式的な理由を挙げて全く踏み込まなかった。この判断を出すのに、なんと3年9カ月もかかった。「憲法裁判所はどちらか一方の結論に伴う非難を避けようと長引かせ、政治的考慮をしたのではないか」という声もある。

  憲法裁判所と裁判所はたびたび、最高司法機関の座をめぐり争っている。このようなやり方をするなら、憲法裁判所があえて「司法機関」として存立しなければならない理由はない。 社会部=ヤン・ウンギョン記者

朝鮮日報 http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2019/12/30/2019123080040.html

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