「政権におもねり、流行を追いかけないと研究費支援が途絶える現実」

 ソウルにある大学で物理化学を研究しているある教授は「政権が変わると、政治との関係で後続研究ができなくなりかねないのが韓国の現実だ。政治の動きを気にする者が生き残り、研究に専念する者は滅んでしまう」と話した。科学が政治に振り回され、科学者も政権の顔色をうかがわなければならないのだ。同教授は「研究費を受け取り続けるためには、テーマを変え続け、何としてでも流行を追うしかない。研究費をもらいやすい『ホット分野』を探す必要がある」とも漏らした。

  最近韓国で最もホットな分野は「夢の新素材」ゴラフェンだ。ソウルにある私立大学だけでグラフェン研究室が10カ所ある。2010年に同分野でノーベル物理学賞受賞者が出たことで物理学科で起きたグラフェンブームが化学科、材料工学科、電気科、機械科などに飛び火した。他の大学でも素材関連学科の新任教授の大半をグラフェン専攻者が占めるほどだ。韓国ではグラフェン関連の論文が平均で2-3日に1件発表される。

  流行に追従する韓国の科学界が生んだおかしな現象が研究成功率100%の奇跡だ。科学技術情報通信部によると、毎年5万件を超える政府の研究開発(R&D)課題の成功率は95-98%で、事実上ほとんどの課題が成功した。最初から成功しそうな研究ばかりをやる科学者たちと失敗に伴う責任追及を避けようとする予算当局の共謀がつくり出した笑えない現実だ。

  基礎科学研究院(IBS)のロドニー・ルオフ団長は「韓国は基礎科学分野で『ハイリスク・ハイリターン』の研究を行わない」と指摘する。炭素素材分野のノーベル賞候補でもあるルオフ氏は「それは研究費支援を容易に受けるための方法ではあるが、それでは世界最高レベルの研究者たちと競争にならない」と語った。

朝鮮日報 http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2019/12/27/2019122780056.html

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