広告まみれの韓国公共交通機関、目まい・不快感を訴える乗客たち

 3月13日午後、ソウル市地下鉄忠武路駅を訪れた。地下2階に降りるエスカレーター前の天井には横3.7メートル、縦0.75メートルの大型広告看板が二つ並んで設置されていた。昨年10月に新たに設置された「マルチビジョン」の広告看板だ。鮮明で明るい画面には「電子製品などを宣伝する色とりどりの動画広告が次々と表示された。広告看板の後ろにある「乗車口」と書かれた案内表示がぼやけて見えるほど、画面は大きくて明るかった。その広告画面の下にある横2メートル、縦1メートルぐらいの大型画面でも動画の広告が続けて表示されていた。同日、地上にある忠武路駅1番出口から地下4階の3号線乗り場まで移動する約3分間の間に、こうした大小の広告看板を40個ほど目にした。地下鉄を利用して通勤する会社員のキムさん(29)は「最近地下鉄に乗る際は、駅ごとに広告があふれていて目が痛くなるほど」と話した。

  最近、地下鉄やバスのような公共交通手段やタクシーなどのソウル主要交通施設に広告が多過ぎる、といった苦情が寄せられている。地下鉄駅はもちろんのこと、バスの窓際、タクシーの後部座席など、これと言って目立つわけではない所にも相次いで広告看板が配置されているためだ。これについて一部の市民は「公害レベル」という。しかし、地下鉄やバス、タクシー業界は「コロナの2年間で赤字が増え過ぎて、広告拡大は避けられない」と弁明する。

  地下鉄1-8号線を運営しているソウル交通公社は2021年、地下鉄駅にある動画(マルチビジョン)の広告看板を、これまでの70枚から120枚に増やした。2016年から5年近く流動人口の多い28駅に70個の広告看板を掲げていたが、今では53駅に120個の広告看板が設置されている。70%ほど増えた計算だ。

  バスの車窓には昨年4月からステッカー式の広告が次々と登場した。ソウル市によると、現在ソウル市内を走る約7300台のバスのうち、約3000台の窓には横20センチ、縦10センチ大のステッカー広告が貼られている。実際3月8日午後、ソウル市麻浦区の市内バスの車庫を訪れてみると、止められてあった23台のバスのうち20台は、16枚のバスの窓にこうした広告が貼られてあった。特に、席に座った乗客の目の高さに合わせて広告のステッカーが貼られていた。週に1回ずつ漢江を渡るバスに乗るというチャン・ヨンジさん(26)は「窓から川を見るのが小さな楽しみだったが、外の風景を見る際に広告を見ないわけにはいかず残念」と話す。

  タクシーの中には昨年5月以降、助手席のヘッドレストに動画が流れる画面を設置した車両が増えている。後部座席に座った客は画面を見ざるを得ない構造だ。業界によると、ソウルだけでもこのようなタクシーが約4700台に上るという。ソウル市銅雀区に住む大学生のオクさん(24)は「夜間は画面が明る過ぎて、目をつぶってもまぶしいくらいだ」と話す。タクシー運転手になって10年のチョンさん(58)は「若い人たちと違って、高齢者たちは画面を消したり音を小さくしたりする方法を知らず、『目まいがする』と苦痛を訴える人が多い」という。

  地下鉄やバス、タクシー業界は「コロナのせいで市民の移動が減り、赤字が増えた」と苦しい事情に触れる。ソウル市内のバスの累積負債は、コロナ以前の2019年の712億ウォン(約70億円)から2年後の昨年は8191億ウォン(約800億円)へと膨らんだ。ソウル市地下鉄の当期純損失も2019年には5865億ウォン(約570億円)だったが、翌年は1兆ウォン(約970億円)を上回った。昨年度の損失も1兆ウォン以上になることが予想される。漢陽大学都市工学科のイ・チャンム教授は「かつて都市の美観のために看板の規格などについての議論が行われていたように、公共交通機関の広告についても調整が必要だ」と促す。ソウル市の関係者は「広告により市民の苦情が増えているのは把握済み」とし「内部での検討を経て苦情を減らせるよう努力する」と説明した。 オ・ジュビ記者、ユン・サンジン記者

朝鮮日報 http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2022/03/25/2022032580132.html

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