【寄稿】韓米の科学技術同盟、韓国なら主導することができる

 韓米首脳が先月発表した長さ8719字の共同声明で、大半のメディアは第一の課題である北朝鮮による核問題を見出しにした。しかし、今回の共同声明で最も大きな割合を占めたのはそれではない。安全保障に1514字を割いた反面、半分以上の4500字は科学技術同盟に関する内容だった。しかも、いっそう注目すべきは供給網・原子力・宇宙・カーボンニュートラル(炭素中立)・感染症・次世代通信といった中核課題のすべてで「対等な」相互協力が強調されているという点だ。

  韓米の科学技術協力の歴史はベトナム戦争のさなかだった1965年にさかのぼる。韓国軍戦闘部隊の派兵の必要性を切実に感じていた米国のジョンソン大統領は、朴正熙(パク・チョンヒ)大統領を国賓として招待し、14項目からなる共同声明を発表した。そのうち12番目の課題が韓国科学技術研究所の設立根拠となった工業研究所設立支援に関する内容だった。韓国は31万人余りをベトナムに派兵し、5099人が戦死し、1万1232人が負傷した。若者たちの血と汗の上に芽を出した韓国の科学技術は、世界第10位の経済大国という実を結ぶことで崇高な犠牲に報いた。

  それから57年という歳月が流れた今、世界は新たな形態の戦争に突入している。技術覇権戦争だ。科学技術が国の安全保障と主権を守る最高の武器となった21世紀に、米国は名実共に科学技術先導国の一員として肩を並べるようになった韓国に対し、今こそ共に歩んでいこうと手を差し出しているのだ。

  今回の共同声明は、大韓民国の科学技術界が志向すべき新たな目標をはっきりと示している。「漢江の奇跡」に続き、今や科学技術先導国という新たな使命にどう応えるかを考えるべき時期だ。まず必要な羅針盤は自信だ。「いくら努力しても米国には追いつけない」という心理的限界に自らを閉じ込めてきたのではないかと省察しなければならない。「韓国の科学技術は世界的レベル」というバイデン米大統領の言葉は決してリップサービスではないことに気付くべきだ。今や米国も切望するほど重要な核心技術で圧倒的な差を付けている韓国の科学技術力を信じるべきだ。

  もう一つの必要条件は研究現場の企業家精神だ。企業家精神は創業だけを意味しているわけではない。終わりが見えない研究、誰もやっていない研究に挑む文化を意味する。韓国科学技術研究院(KIST)が、失敗するのが当然と思われる挑戦的研究事業のために定量的個人評価をなくしたのは、二分法的評価やリスク回避型研究はもう消え去るべき旧時代の遺物だと信じているからだ。それ以降、KISTの研究者たちは、グリーン水素経済性確保、常温動作量子コンピュータ開発など、相次いで世界的な成果を挙げている。経営学者のピーター・ドラッカーは企業家精神を「practice(実行)」と定義した。実行がなければ何も起こらない。だが、実行してみればたった0.1%でも可能性というものが生じる。大韓民国を世界最高の挑戦強国に導いた鄭周永(チョン・ジュヨン)現代グループ創業者の「やってみたのか?」という一喝も同じ脈絡だ。大韓民国が科学技術先導国という新たな時代的使命の前に立った2022年、その一言にあらためて胸が躍る。 ユン・ソクチン韓国科学技術研究院(KIST)院長

朝鮮日報 http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2022/06/06/2022060680041.html

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